第64章 面接の受け答えは準備しすぎると失敗する。
隠れた電柱の影から慎重な様子で大通りへと目を向ける土方。山崎が土方の後ろから小声で声を掛けると土方は大通りを通る一人の男に目を向けながら静かに答えた。
土方「ありゃあ確か、同心の鳥居じゃねぇか?」
山崎「鳥居?吉原管轄の奉行所の?」
土方が向ける視線の先には鳥居という奉行所長の姿があった。町の奉行所の人間とはあまり関わりのない真選組だが、江戸一帯の各奉行所のトップくらいは知っている。
山崎「鳥居も例の件を調べに来てるんですかね?」
土方「…そういう面にゃ見えねぇがな。」
捜査に訪れているような、仕事をしている男の顔付きではなかった。どこか黒い笑みを浮かべてゆったりと歩いている。土方はその姿をじっと見つめた後、踵を返して来た道を戻り始めた。
山崎「副長?何処に?」
土方「ちょっと気になる事が出来た。山崎、お前は予定通り葵咲を張ってろ。帰ったらきっちり報告すんだぞ。それから、如何わしい雰囲気になったら何が何でも止めろ。いいな?」
山崎「ちょっとォォォ!!全く、勝手なんだから。」
言いたい事だけ言ってさっさとその場から立ち去る土方。その背に叫び掛けるも無視された。仕方なく山崎は土方と別れて逆方向へ。予定通り華月楼へと足を向けた。