第64章 面接の受け答えは準備しすぎると失敗する。
暫く歩き、路地裏の行き止まりへと辿り着いた時、三人は葵咲に向き直り、そのうちの一人が口火を切った。
「貴女初見でしょう?何故菊之丞様とあんな親しげに話してたの?華月楼のルール知らない?」
葵咲「あ、いえ。ちょっと遊郭内で迷ってたら親切に案内して下さっただけで、私は…。」
まさか菊之丞ファンに目を付けられるとは思っても見なかった。これ以上怒りを煽り、また絡まれたらたまったもんじゃない。
葵咲は事情を説明して説得を試みるが、女達は聞く耳を持たず、一人の女が葵咲を突き飛ばす。葵咲は近くにあった積荷の角に腰をぶつけ、そのまま尻餅をついた。
葵咲「っ!!」
ズキッ。
打ち付けた箇所が悪く、鈍い痛みが走る。葵咲はその場からすぐに立ち上がれずに女達を見上げた。
「何を白々しい!わざとなんじゃないの?」
「もう二度と菊之丞様に近付かないで。」
台詞を吐き捨てた女達は葵咲の横を通り過ぎ、路地裏から出て行った。
その時、葵咲の後を追って来た菊之丞がその場を通りかかる。菊之丞は女達の背を見届けた後、路地裏へと目を向けた。葵咲は菊之丞の視線には気付いておらず、着物についた砂埃を払いながらゆっくりと立ち上がった。
菊之丞「・・・・・。」