第64章 面接の受け答えは準備しすぎると失敗する。
玄関口まで菊之丞に案内してもらい、華月楼を出た葵咲。辺りを見回して土方と山崎の姿を探す。
だが、それらしき人影は見つからなかった。
(葵咲:土方さん達はまだ中かな…。二人を待ってた方が良いよね。)
吉原内で二人と落ち合うのは良くない気もしたが、一人でさっさと屯所へと帰るのも気が引けた。捜査を邪魔された感じはあるが、心配して様子を見てくれていた事は分かっていた。そんな二人を放っては帰れない。
だが山崎はともかく、土方の顔は知れ渡っている。泣く子も黙る真選組、鬼の副長。一緒にいるところを華月楼の誰かに見られれば潜入捜査がバレる可能性だってある。
このままここで二人を待っていて良いものだろうかと考えていると、背後から声を掛けられた。
「貴女、ちょっと宜しくて?」
葵咲「?」
先程葵咲を睨んでいた華月楼の客の三人だ。睨まれていた事など知らない葵咲は、きょとんとした顔付きで小首をかしげる。女達は葵咲について来るよう促し、近くの路地裏へと入った。
その頃、葵咲と別れた菊之丞は廊下を歩いていると落し物を見付ける。葵咲が着けていた簪の装飾品だ。それに気付いた菊之丞は装飾品を拾い、葵咲の後を追って華月楼を出た。