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銀魂 - 雪月花 -

第63章 草食系男子だって中身は獣。


菊之丞「…全く、何故私が貴女のような人と。本来なら初見で話すなんてありえない事なんですよ。」


放たれた言葉は冷たいようでいて、どこか暖かさを感じる言葉。照れ隠しのような雰囲気を漂わせていた。それを感じ取った葵咲は自然と顔がほころんだ。葵咲の笑顔を見て菊之丞は更に照れたように頬を赤らめ、さっと葵咲に背を向ける。


菊之丞「さぁ、早く行きましょう。今日の所は帰りなさい。」

葵咲「はい。あの、…有難うございます。」

菊之丞「別に礼を言われるような事はしてません。」

葵咲「でも、助けて頂いたので。」

菊之丞「迷子を放っておくわけには…」

葵咲「そうじゃなくて。いや、それもなんですけど…こけそうになった時、支えてくださって。」

菊之丞「!」


その言葉に思わずまた振り返ってしまう菊之丞。素直に謝礼を述べる葵咲に良い印象を抱きつつも、それを言葉には出来ずに顔を逸らす。


菊之丞「…大したことはしていません。行きますよ。」

葵咲「あのー…。」

菊之丞「まだ何か?」

葵咲「手…。話す事が駄目なら手を繋ぐのはもっとマズイんじゃ…。」

菊之丞「あ。」


先程葵咲がこけそうになった際に支える為に掴んだのだが、握ったままでいた。どうやら菊之丞は全くの無意識だった様子。葵咲から指摘を受けて初めて気付いた。葵咲はクスッと笑いながら菊之丞に優しい瞳を向ける。


葵咲「大丈夫です、もうこけたりしませんから。」


二人のこの暖かい雰囲気を勿論の事ながら土方達は天井裏から覗き見ていた。


山崎「…なんか、乙女ゲーみたいな展開になってますね。」

土方「んのヤロォ…。気安く手なんか握りやがって…!」

山崎「副長、落ち着いて下さいよ。」


違う意味で不安を感じ始めている山崎。土方が爆発するのも時間の問題かもしれない。暫く葵咲の顔をじっと見ていた菊之丞だったが、視線を床へと落としながらボソリと呟いた。


菊之丞「…貴女といると調子が狂うようです。」

葵咲「え?何か仰いました?」


その呟き声はとても小さく、近くにいる葵咲ですら聞き取れない程だった。葵咲が小首をかしげながらきょとんとしていると、菊之丞は再び葵咲へと視線を向け、首を横に振った。


菊之丞「いえ、何でもありません。」

葵咲「?」
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