第7章 上司が原因のパワハラは上司に相談出来ない。
応接間へと呼び出された葵咲は、自分の今置かれている状況を把握出来ずにいた。葵咲は部屋の下座に座らされ、その向かい側、つまり上座側には近藤、土方、総悟の三人が並んで座っている。まるで役員面接のような緊張感だ。雑談などはなく、土方はいきなり本題に入り、葵咲に今抱えている仕事について問いかけた。
葵咲「え?今抱えてる仕事…ですか?」
土方「ああ。」
問われた葵咲は少し考えながら、口元に手を当てて答える。
葵咲「支払請求書の作成と、月々の会計報告・予算管理…後は献立表の作成と、土方さんに頼まれてる資料の作成…これだけですが…。」
どれも土方の与えた仕事である。
土方「・・・・・。それぞれの仕事にかかる時間は?」
そう問われた葵咲は、目を瞑って右手をこめかみのあたりに持ってきて考えながら言った。
葵咲「えーっと…会計報告と予算管理はそれぞれ4,5時間掛かりますが、月に1回のお仕事です。日々の支払請求書は量にもよりますが、まぁ2時間もあれば…。週ごとの献立表作成は、1時間程度です。資料作成もそれくらいですね。」
近藤「残業をしているようには思えんが…。」
土方「・・・・・。」
本来なら到底一人でこなせる仕事量ではないのだが、葵咲は仕事が早く、一人分以下の仕事時間となっていた。ちなみに女中としての掃除や洗濯の仕事についても尋ねてみたが、それらの会計処理等優先されるべき仕事が終わった空き時間のみ行なっていると言う。勿論、夜は夕食の準備以外は行なっていない。話を聞く限りでは残業をしている要素は微塵もなかった為、近藤と土方は唸り、頭を悩ませた。
その時、山崎が部屋へと入ってきた。
山崎「副長ー!お医者さん捕まりました!」