第62章 どの組織にも型にはまらない奴がいる。
葵咲「じゃあどうやって調べるんですか?退君が女装して潜入するの?」
山崎「また俺!?てか無理でしょ!遊郭じゃ絶対バレるよ!」
思わず反射的に断ってしまう山崎。その会話のボールをキャッチした葵咲は変化球のごとく土方へともう一度提案を送球する。
葵咲「ほら、私しかいないじゃないですか。調べられるのは。」
土方「けどお前…!」
葵咲「大丈夫です。如何わしい行為をするつもりはありませんから。」
土方が却下したいのは“潜入捜査”自体ではない。“遊郭という場所に客として乗り込む事”である。それさえクリアすれば受け入れてもらえるのでは。そう思ったが為の返しだった。だがこの返答に対して思わず山崎がツッコミを入れてしまう。
山崎「さっき出来るって言ったよね?」
葵咲「言葉のあやだよ。したくないもん。」
今回の事件について葵咲は真剣に早期解決に挑もうとしている。その姿勢は十分に伝わってきた。このまま無下に却下し続けても葵咲の事だ、勝手に自ら単身乗り込みかねない。ここは本人も納得した上で引き下がらせなければ逆に危険だ。今度は土方も気持ちを落ち着かせた上で静かに問い返した。
土方「じゃあどうするってんだよ。逆に怪しいだろーが。」
土方の言うとおり、遊郭に訪れてそういう行為をしないというのはおかしな話である。したくないなら来なければ良いだけの話なのだから。これでやっと葵咲を諦めさせられる、そう思ったのだが葵咲は引き下がらなかった。葵咲は満面の笑みを浮かべて言葉を返した。
葵咲「良い考えがあるんです。」
土方・山崎「・・・・・。」
“良い考え”については詳細を喋らず、潜入捜査に一抹の不安を感じる土方と山崎であった。