第62章 どの組織にも型にはまらない奴がいる。
葵咲「じゃあ私がお客さんとして潜入しましょうか。」
土方「まぁそれが一番手っ取り早いが、お前を んな危険な目に合わせられ…」
そこまで発言したところで、会話相手がおかしな事に気付く。ふと目を開けて隣を見やると、そこには真剣な眼差しを向ける葵咲が正座していた。
土方「どわーっ!なんで知らねー間に会話に混ざってんだよ!」
葵咲「お茶出そうと思って。ドウゾ。」
山崎が土方の部屋に入ったところをたまたま見かけた葵咲は、気を利かせてお茶を用意したのだった。土方と山崎の前にお茶を出し、葵咲は話の筋を戻す。人差し指を立てて自らの意見を述べた。
葵咲「お客さんに薬が売られてるっていうなら、女性客として潜入するのが一番確実に証拠を掴めるじゃないですか。」
山崎「まぁ確かにそうだけど…。でも…」
チラリ。山崎は土方の方へと視線を送る。土方は腕組みしながら眉間に皺を寄せて深く目を瞑っていた。山崎が土方の方に目をやった事には気付いていない様子の葵咲。葵咲は山崎の同意を聞いて笑顔を見せた。
葵咲「じゃあ…」
土方「却下。絶対駄目だ。」
土方は目を瞑ったままスッパリと葵咲の申し出を跳ね返す。その態度が気に触る葵咲。折角良い方法を提案しているのに。葵咲はムッとした様子でワケを尋ねた。
葵咲「どうしてです?」
土方「お前、意味分かって言ってんのか?」
葵咲「危険は百も承知ですよ。」
潜入捜査は危険を伴う任務。それもそうなのだが、土方が今言いたい事はそれではない。