第61章 契約書の小さい文字には重要な事が書かれている。
と、ここで服部は真顔に戻り、眉をピクリと動かす。何かの気配に気付いたのだ。
服部「…!?」
(服部:なんだ、屋敷の中に妙な気配が…。この数は…!?)
おびただしい数の気配を感じ取る服部。背中に冷たい汗が流れ落ちる。真選組が慌てて土足のまま突入してきたのにも合点がいった。悠長に靴など脱いでいる場合ではなかったのだ…!服部は改めて事の重大さを認識し、懐からクナイを取り出す。それを見て銀時達も表情を改めて構えた。その時だ、庭先の繁みが微かに動く。それに気付いた総悟は叫んだ。
総悟「土方さん!」
土方「来るぞ!構えろォォォォ!!」
一同「!?」
緊迫した空気が辺りを充満し、土方の号令と共にその場にいた皆がゴクリと唾を飲み込んで戦闘体制に入る。真選組隊士全員が険しい顔つきになった。そんな中葵咲だけは下唇を噛み、辛そうな顔を浮かべていた。
葵咲「っ!!」
服部「・・・・・。」
誰もが敵の襲来に備えて外へと目を配っている中、服部だけは葵咲の方へと目を向けていた。葵咲の複雑な表情に気付いた服部は、深く考え込むように少しの間、葵咲の表情をじっと見つめていた。そしてフッと視線を逸らした。その表情は何かを決意したような真剣なものだった。
服部が“葵咲と葵咲の願いを護る”と決意を固めて外へと目を向けたその時、再び庭の繁みが動いた。それに気付いたのは服部だけではない。その場にいた真選組隊士達も気付いていた。そしてそれを合図に隊士達は刀を構えて繁みに向かって斬りかかった。
「うおおおぉぉぉぉ!!」
木の繁みごと斬りかかるも空振り。そこから黒い影が飛び出した。その黒い影は宙を舞い、クナイを構えていた服部の真上へ。その姿を目の当たりにした服部はフリーズした。
服部「…え。」
目を疑う服部。全く想定外の“獣”が目の前にいたからだ。
服部「えええええぇぇぇぇぇ!?!?」
服部の頭上を舞っていた“獣”こと、猫は服部の顔面へと落ちてくる。
「ニャーーーーーッ!!!!!」
服部「ちょ、…ぎゃあああァァァァァ!!」
顔面を爪で引っかかれ、傷だらけになる服部だった。