第61章 契約書の小さい文字には重要な事が書かれている。
その後、真選組VS猫達の壮絶なる闘いが繰り広げられたが、何とか真選組が勝利を収めた。何匹かの野良猫は取り逃してしまったものの、大方の猫は捕まえられた。捕まえた猫達は去勢手術を行なう予定だ。去勢手術を施した猫は大人しくなるし、恐らく再来の心配はないだろう。
だが服部の顔面以外も被害は甚大で、屋敷も猫の爪跡が多く残される結果となった。
葵咲から傷の手当を受ける服部の表情は不機嫌そのものだった。まぁ無理も無い。てっきり攘夷志士か何かに狙われているものだと思っていたのが、単なる野良猫の襲撃だったのだから。しかも今回の被害は主に服部に関するもの。納得がいかないのも当然だった。そんな服部に対し、土方は煙草をふかしながら眉根を寄せて苦言を述べる。
土方「だから言っただろうが。首を突っ込むなって。」
服部「獣って猫ォォォォ!?黒い野獣(たかすぎ)じゃねーのかよォォォォ!!」
堰を切ったように不満が口から出てくる服部。服部のツッコミに土方は肩眉を上げて反論する。
土方「高杉ィ?どっから奴が出てきた。そんな事誰も一言も言ってねぇぞ。」
服部「いやいや、確かにそうなんだけど!」
ここで土方と近藤が今回の件に関して詳しい事情を説明した。
時を遡ること、雪月花第五十七話。葵咲がコソコソと野良猫たちに餌付けしていた件だ。あの件は一番隊との抗争で真選組が勝利を収めて一度は収拾をつけたのだが、事件は完全には沈静化していなかったのだ。結局その後も葵咲は陰に隠れて野良猫に餌をあげ続け、野良猫たちの信頼を獲得した。だがその代償として真選組屯所が猫屋敷と化したのだ。躾の出来ていない猫達はいたるところで爪とぎをしたり、う●こをしたり。野良猫を排除しようにも、葵咲が屯所にいては猫達が集まってくるばかり。少しの間、葵咲を屯所から放れさせる必要があった。ここまでの事態を招いた諸悪の根源である葵咲への罰としての謹慎処分も兼ねて、今回服部邸へと送り込んだとの事だった。