第6章 仕事において報連相は何よりも大事。
翌日。土方は煙草を咥えながら屯所の縁側を歩いていた。すると隊士が葵咲を呼ぶ声が聞こえてきた。
「葵咲ちゃーん!これもお願いしていいかな?」
葵咲「はーい。」
その様子を見た土方は庭先にいる葵咲にふと目をやり、問い掛けた。
土方「何やってんだ?」
葵咲「皆さんの洗濯物を…。」
土方「んなもん各々にやらしゃいいだろうが。」
葵咲「ついでですから。それに…何かしていないと手持ち無沙汰で。」
葵咲は土方に穏やかな笑顔を向けながら答える。それを聞いた土方は、ふと昨日葵咲に渡した仕事の事を思い出し、問い返した。
土方「昨日渡した支払い請求はどうした?」
葵咲「もう終わっちゃいました。」
土方「・・・・・。」
異例の早さで仕事をこなす葵咲。普通なら二、三人でこなす量の仕事も一人でさっさとこなしてしまうのだった。土方は少し考え、やがて口を開いた。
土方「じゃあそれ終わったら俺の部屋に来い。」
葵咲「はい。」
洗濯物を片付けた葵咲は、土方の部屋へと訪れた。土方は一枚の紙を葵咲に差し出し、仕事の説明をした。
土方「これは今度行う決戦の戦略になる。お前は隊士じゃねぇから場所等詳しいことは言えねぇが、これをまとめて隊士どもに説明する打ち合わせ資料を作成して欲しい。出来るか?」
渡された紙は土方の手書きで箇条書きに書かれたメモだった。簡単な図等も描かれている。葵咲は書類に一通り目を通してから、答えた。
葵咲「はい、やってみます。」
そう言って葵咲は土方の部屋から出ていき、自室の離れへと戻っていった。
それから一時間もしないうちに、葵咲は土方の部屋へと訪れる。
葵咲「土方さーん!打ち合わせ資料出来ました!」
土方「!…早ぇな。」
まさかその日のうちに仕上がると思っていなかった土方だが、葵咲から書類を受け取ると、すぐさま目を通した。
葵咲「どうですか?」
土方「ああ、悪くねぇ。じゃあこれからはこういった仕事も頼めるか?」
葵咲「はい。」
そうして葵咲の仕事は、支払請求書等会計処理、献立表作成、女中の仕事に、土方の指示する資料作成も加わったのだった。