第60章 修学旅行の夜は枕投げ。
その叫びも虚しく、服部の言葉には誰も耳を傾けなかった。しかもその発言を遮るのはまたもや葵咲だった。葵咲は真剣な眼差しを猿飛へと向ける。
葵咲「あの!もしかして…“くの一”なんですか?」
猿飛「だったら何よ。」
隠す必要もなければ、元々隠してもいない。故に素直にそう答える猿飛。その返答を聞いた葵咲は突如祈るようなポーズで両手を合わせ、猿飛にキラキラ眼(まなこ)を送る。
葵咲「かっこいい~…!!」
全員「え?」
予想打にしていなかった発言にその場にいた誰もが目を瞬かせる。そんな周りの空気は一切読まず、葵咲は変わらず目をキラキラさせて猿飛の両手を握って問い掛けた。
葵咲「影分身の術とか螺旋丸とか使えるんですか!?」
銀時「使えるわけねーだろ。ナルトじゃねーんだよ。」
完全に別次元の技名に、銀時は死んだ魚のような眼差しを向けながら冷静にツッコむ。葵咲はその発言を聞いて別の質問を投げる。
葵咲「じゃあスサノヲとか写輪眼は!?」
銀時「使えるわけねーだろ。サスケでもねーんだよ。」
葵咲「じゃあじゃあ!起爆粘土とか使えるんですか!?芸術は爆発ですもんね!!」
銀時「なんでここでデイダラ!?サクラは!?そこはサクラの術言ってあげて!スリーマンセルゥゥゥ!!」
想定外のキャラクター名登場に、思わずツッコむ銀時。だがそんなツッコミも無視して葵咲は尊敬の眼差しを猿飛に向け続けた。
猿飛は葵咲の手を振り払って葵咲から視線を外す。眩しい、といった仕草で両手を自らの顔の前にやって葵咲の視線を遮ろうとした。
猿飛「ちょ、やめて。そんなキラキラした眼差し向けないで。」
葵咲「あの!サインくださいっ!握手もお願いします!!」
猿飛「しないわよ!握手もサインもしないから!だからその瞳で見るのをやめなさいってェェェェェ!!」
新八「慣れてないんだ。転生のドMだから褒められる事に慣れてないんだ。」
いつも蔑ろにされ、ぞんざいな扱いを受けている猿飛。しかもその事に喜びを感じる彼女にとっては、そういった待遇に慣れていないのだ。
服部「つーかなんでここでも俺アウェイ!?俺にも尊敬の眼差し向けろよ!俺も忍者なんだけどォォォ!!」