第60章 修学旅行の夜は枕投げ。
時が止まったように固まる一同。それもそのはず、この場にいるはずのない人物がいつの間にか、ちゃっかり加わっていたからだ。
そう、始末屋さっちゃんこと、猿飛あやめが銀時の隣に寄り添うように座っていた。
一斉に皆の視線が猿飛に集まる。隣にいる銀時は猿飛に目を向けた後、両手を挙げて驚いた。
銀時「ギャアアアァァァァ!!なんでいんのお前ェェェェ!!」
猿飛「あら、銀さんあるところにさっちゃんあり。自然の摂理じゃない♡」
そう言って猿飛は銀時の首元に手を回して抱きつく。抱きつかれた猿飛の手からは納豆の強烈な臭いが香る。手を首に回されていては、鼻に近くてひとたまりも無い。銀時は思わず猿飛の頬を両手でグイグイ押して自分から離れさせようとした。
銀時「ちょ!くさっ!お前また納豆食ったろ!」
猿飛「いいわ。そういうプレイね?もっと蔑みなさいよ!」
銀時「マジだから!マジで臭いから!マジで離れてくんない!?」
くっついて、押しのけて、そんなやり取りをしている二人を葵咲は無言でじっと見つめる。その視線に気付いた猿飛は、眉根を寄せて睨むように葵咲へと目をやった。
猿飛「…何よ?さては貴女、私と銀さんの仲を見て嫉妬してるのね?フン、残念ね。私達はもうあ~んな事やこ~んな事もした仲なんだから。貴女の入り込む余地なんてないのよ。」
フフンと鼻を鳴らしながら微笑を浮かべて深く目を瞑る猿飛。そんな誇らしげな彼女に銀時は冷ややかな視線を送る。
銀時「ちょっと。勝手に捏造すんのいい加減やめてくんない。年賀状ん時どんだけ大変だったと思ってんだ。」
忘れもしないコミック第34巻、294訓。年賀状の画像を勝手に加工されて銀時と猿飛とが結婚した事になっていた。
しかもその年賀状は色々な方面へと多数バラ撒かれてあらぬ誤解を招いた。何なら慰謝料を請求したいぐらいだ。
銀時は猿飛へと言及しようとするが、その件に関しては完全にスルーされる。皆が盛り上がっている中、一人会話に入れずにポツンと取り残されていた男が、耐え切れずにここで口を挟んだ。
服部「俺ん家で俺抜きで勝手に盛り上がるのこそ やめてくんない?なにこのアウェー感。俺ん家なのに!」