第60章 修学旅行の夜は枕投げ。
屯所で土方との会談を終えた服部は自宅へと戻る。
服部「ただいまー。」
葵咲「おかえりなさい。」
服部は靴を脱がずに立ったまま葵咲が玄関に来るのを待っていた。そして葵咲がパタパタと玄関に訪れたのを視界に入れると、手に提げていたビニール袋をずいっと前に差し出した。
服部「ほれ、土産だ。たい焼き買って来た。」
葵咲「わぁ!有難うございます!」
家への帰路でたまたま屋台を見かけたのだ。ビニール袋を受け取った葵咲は、袋の中を覗く。たい焼きは計四つあり、あんことカスタード二つずつ。葵咲の嗜好を知らない服部は気を利かせて二種類買ってきたのだ。袋を渡した服部は立ったまま会話を続ける。
服部「晩飯どうする?何か出前でも取るか、それか何か買って来てやろうか?」
靴を脱がなかったワケはこれだ。家にあった食材は今朝、葵咲が朝食に全て使い切ってしまった。何か必要ならこのまま買出しに出掛けようと思った為である。だが葵咲は首を横に振って笑顔を向ける。
葵咲「いえ、朝の残りにアレンジを加えて準備してますよ。捨てるの勿体ないですし。」
服部「そうか、悪ィな。」
葵咲「たい焼きは食後と明日の朝にでも食べましょう。」
その返答を聞き、今日は買出しの必要がなくなった為、服部は靴を脱いで家に上がった。