第59章 朝食バイキングは無性にワクワクする。
服部は玄関からは入らず、塀を越えて直接土方の部屋の前の庭へと降り立つ。
服部「邪魔するぜ。」
土方「!」
突然の服部来訪に驚いた表情を見せる土方。だがそれも瞬間的なもので、すぐにいつもの冷静な表情へと戻した。
土方「…おい。こんなところで何してやがる。」
その言葉には二つの意味があった。何故この場に訪れているのかという事と、葵咲を放って何をしているんだという意味。服部に依頼した仕事は葵咲の護衛。傍についていなければ意味が無い。
服部は凄みをきかせた土方の表情には物怖じせずに淡々と答えた。
服部「買い物のついでだ。アンタに確認しときたい事があってな。」
土方「・・・・・。」
土方は煙草を咥えたまま、睨むように服部の顔を見据える。服部は真剣な眼差しで土方に質問をぶつけた。
服部「アンタ、あの女をどうするつもりだ?」
土方「何の話だ?」
服部「あくまでとぼけるつもりか。今回の件、本当の目的は市村の護衛なんかじゃねぇ。市村とその周りを調べる事。違うか?」
土方「!」
鋭い推察に土方は目を見開く。先程服部の受けた電話は、以前依頼した情報屋からの電話だった。情報屋は土方達、真選組の動きを掴んだのである。
土方は鋭い眼光で服部を睨みつけながら言葉を放った。
土方「…てめぇ、何を知った?」
服部「別に。まだ何も知っちゃいねぇさ。俺もまだ調査中でね。」
土方「言ったはずだ。余計な詮索はするなと。」
普通の、堅気の人間ならば鬼の副長の睨みにたじろいでしまう事だろう。だが元お庭番のこの男は、怯む事なく土方に対峙した。
服部「護衛は命がけの任務だ。こっちも敵を知る必要がある。敵さんの事を調べようとしたら、アンタらと市村に辿り着いただけの話だ。」
土方「・・・・・。」
真選組(じぶんたち)や葵咲の事を何処まで知ったのか、それを見極めるかのように土方はじっと服部を睨みつける。