第59章 朝食バイキングは無性にワクワクする。
服部「…俺の茶碗とか取り皿に直接毒塗られてたら一緒だろ。」
葵咲「あ、そっか!そういえばそうですね…。じゃあ交換しましょう!お箸も!!いや、お箸は汚いか…ちょっと洗ってきます!!」
服部「いや、いいから!物の例えだから!!」
的確な服部のツッコミを受けて、立ち上がろうとする葵咲。服部は慌てて葵咲の腕を掴み、流し台に向かう事を止めた。
そうしてふと緊張の糸が途切れた服部は思わず吹き出す。
服部「…プッ。面白ぇ奴だな、お前。悪かった。俺ァ職業柄こういうのは疑いの目で見ちまう癖があるんだ。」
葵咲「ふふっ。…いえ、その方がいいです。」
お互い顔を見合わせて微笑みあう二人。だが葵咲の微笑みはすぐさま寂しそうな笑みへと変わり、少し俯き加減に言葉を押し出した。
葵咲「疑ってもらえる方が楽なんだけどな…。」
服部「・・・・・。」
葵咲の影に気付いた服部はその顔をじっと見つめる。葵咲は慌てて顔を上げて先程の笑顔に戻して椅子に座りなおす。
葵咲「すみません、こっちの話です。ところで味はどうですか?」
そう言われて服部も椅子に座りなおし、改めて食事に箸を付けた。
服部「…美味っ。ちょ、コレホントお前が作ったの?どうやって作ったの!?」
何なら、そこらへんのお店よりも美味しい。服部はパクパクと箸を進めながら葵咲に問い掛けた。葵咲は満足そうな笑顔で答える。
葵咲「隠し味に…何を入れたかは、秘密です!」
服部「ちょ、それズルくね?俺も作れるようになりてぇんだけど!」
二人の間に見えない壁が無くなり、朝の食卓は暖かい空気に包まれた。