第59章 朝食バイキングは無性にワクワクする。
二人はバイキング形式での朝食を取り始める。好きなモノを各自で盛り付け、テーブルを挟んで向かい合って座った。
服部は箸と茶碗を抱え、葵咲の方をじっと見ながら様子を窺う。
(服部:この女の行動が全く読めねぇ。一体腹の内に何隠してやがる…。)
服部は葵咲の事をまだ信じきれずにいた。まぁ葵咲本人が、というよりは葵咲の置かれている状況等から判断するとそうなってしまうのだ。
葵咲は服部には目もくれず、自らの作ったひじきの煮物を口に運びながら言った。
葵咲「大丈夫ですよ。毒なんて入ってませんから。」
服部「!?」
まるで服部の疑いを察したかのような発言に、ドキリと背筋を凍らせる服部。こういう時、人間素になってしまうものだ。まさか葵咲が自分の疑いに気付いているなど、微塵も思っていなかった為、思わずそれが一瞬表情に出てしまった。
葵咲はそんな服部の表情の引きつりに気付いたが、気付かぬフリをして笑顔を向けた。
葵咲「ほら、私も食べますし。」
服部「・・・・・。」
そう言われて逆に箸を進めにくくしてしまう服部。しかも一度言葉を失ってしまい、何を話して良いのか適切な会話を見つけられず、その場に沈黙が下りた。
とても重苦しい空気である。そんな沈黙を破ったのは葵咲だった。
葵咲「服部さん、私のこと警戒してるでしょう?こういう食事形式にすれば安心して食べて貰えるんじゃないかなって思って。」
服部「! ・・・・・。」
葵咲の気遣いが心に染みる。本当なら葵咲が一番不安なはずではないのか。詳しい事情や状況はまだ分からないが、狙われている身。人の事を心配している余裕などないはずなのに…。
服部は自分の考えを改め、心の内で反省した。そして少し葵咲に心を開くかのように、思ったままの意見を述べる。