第59章 朝食バイキングは無性にワクワクする。
ピザの配達ついでにダメもとで配達先の顧客に話を聞いてみた。すると思わぬ情報の収穫があったのだ。
「市村葵咲?あぁ、知ってるよ。護り屋やってた可愛い子だろ?」
服部「護り屋?」
「ああ。ボディーガード稼業だよ。」
こいつは驚いた。真選組に入る前の職業がボディガード。服部の背後を捕らえたあの動きにも納得がいく。
気になるのは護っていた相手だ。服部は掘り下げるように質問を重ねる。
服部「誰のボディーガード勤めてたんだ?」
「特定の人物じゃないみたいだよ。俺も詳しくは知らねぇが、フリーの護り屋で、依頼があれば請け負って日当で働いてたらしい。」
服部「・・・・・。」
将軍家のお抱えでもなければ、攘夷側の人間だったわけでもない。だが、フリーは客を選ばないという事。どんな客が紛れていたかは分からない。その中で恨み辛みを被る事もあったかもしれない。叩けば埃が出てくる可能性はある。顎に手を当て、唸るように考え込んでいると、客の男がいらぬ推測を立てた。
「なんだ、兄ちゃんあの子に惚れてんのか?」
服部「ちげーよ。」
そーいう話じゃない。こっちは真剣に考えてるのに水を差すような発言をされてイラっとくる服部。だがそんな苛立ちには気付かずに男は笑いながら続けた。
「はっはっは。残念だったな、今は真選組にいて、逆にしっかりガードされちまってるよ。」
服部「だからちげーっつってんだろ!」
これ以上この男からは情報を引き出せないと判断し、ピザ代を貰って退散した。