第58章 To LOVEるは男のロマン。
葵咲「服部さんの?さっきトイレお借りしたら置いてあったんですけど、無くなりかけてたので…。」
服部「!」
思わぬ気遣いに、先程とはまた違った高揚感を覚える服部。初対面でそこまで気遣える輩が自分の周りにいただろうか。いや、“この銀魂世界に”といっても過言ではない。服部は少し照れくさそうにしながら頭をポリポリと掻く。
服部「…や、気持ちは有難いがな。お前自分の状況分かってんのか?」
葵咲「居候です。」
服部「や、居候だけど。そうだけど!そういう事言ってんじゃねぇの!お前狙われてんだろ!?」
葵咲「ああ~。なんかそうらしいですね~。」
服部「なんで他人事なの!?お前の話ィィィィィ!!そんな奴が俺のボラギノール買いに行ってる場合じゃねぇだろっつってんの!!」
どういう事情かは分からないが、昨日の土方の様子を見てもただ事じゃない事は確かだ。匿われる程の事態なのである。そんな状況でボラギノールなど買いに行っている場合ではない。その事を伝えたかったのだが、葵咲はまだ理解していないといった様子で反論した。
葵咲「でもお家に厄介になるので買出しぐらいしなきゃ悪いなと思って。」
服部「いいよ別に。こっちは仕事だからな。」
葵咲「そうですか?」
服部「そう!むしろそうして欲しい!!」
終わりなき論争になりそうだったので、半ば強引に話を切り上げる服部。野良猫をシッシッと追い払うような仕草で部屋に帰るよう促した。
服部「分かったらとっとと客間に戻ってろ。」
葵咲「はーい。」
葵咲が本当に客間の方へと向かったのか心配になった服部は、ダイニングルームの入口からひょっこり顔を出して確認する。どうやら葵咲は本当に諦めた様子で、客間の方へと足を向けていた。
服部「あいつ大丈夫か?つかホントに真選組隊士かよ?緊張感の欠片もねぇな…。」