第58章 To LOVEるは男のロマン。
服部は葵咲の少し前を歩き、屋敷の中を案内する。まず始めにトイレ、洗面所等生活に必要な場所を案内した上で、葵咲を泊める客間へと足を向けた。客間に着いて襖を開ける。そして葵咲に中に入るよう促しながら説明を始めた。
服部「今日から暫くはこの屋敷で暮らしてもらう。ここがお前の部屋だ。俺は隣の隣の部屋にいるから何か異変があったらすぐに呼べ、いいな。」
葵咲「はい、有難うございます。」
“隣の隣の部屋”というのは、服部なりの葵咲という女性への配慮である。事情により一つ屋根の下で生活する事になったとは言え、男と女。隣の部屋では音漏れ等気にする事もあるだろう。それに、聞き耳を立てている等とあらぬ疑いを掛けられるのも御免だった。かと言って離れた部屋で生活をすれば護衛の意味が無い。それ故出た結論が、“隣の隣の部屋”というわけである。
服部「それから、屋敷内では今案内した場所では自由にしてもらっていいが、外に面したところへは近付くな。何処で誰が見てるか分からねぇからな。まぁそこの中庭には出てもらっていい。」
この部屋は中庭に面している部屋。服部は説明がてら部屋の奥の障子を指差しながら、その先は中庭である事を説明する。それから最後に補足を付け加えた。
服部「あ、それと家の中の物は勝手に物色するなよ。」
葵咲「はい。」
全ての説明を聞き終えた葵咲は笑顔で深々と頭を下げる。そんな葵咲を詮索するかのように服部は彼女の顔をじっと見ていた。
服部「・・・・・。」