第58章 To LOVEるは男のロマン。
翌日。服部は早朝から着替えを済ませ、客人の来訪に備えた。土方から依頼のあった護衛で匿う“女”が訪れるのだ。
時計の針が十時を回った頃、玄関のベルが鳴る。
服部「お。来たな。」
服部は読んでいたジャンプを置き、腰を上げて玄関へと向かう。戸を開けるとそこには外泊用の荷物を抱えた葵咲と、付き添いの真選組隊士一人が立っていた。
隊士は服部が出てくると軽く会釈をし、その場を立ち去った。
葵咲「こんにちは、今日からお世話になる事になった市村です。」
服部「お前さんか。へぇ、なるほど。確かに別嬪さんだな。俺は興味ねぇわ。」
顎に手を当てながら葵咲の顔をまじまじと見つめる服部。葵咲はきょとんとした顔で目をパチパチさせた。
葵咲「? 何の話ですか?」
昨日の服部と土方とのやり取りを知らない葵咲なので、当然の反応と言えるだろう。そんな彼女に対して服部は簡単な説明をした。
服部「いや。俺の好みの話だ。俺は廃墟みてーな顔の女が好みなんでね。」
葵咲「えぇ!?じゃあ私ヤバイってこと!?服部さんのドストライクゾーンじゃん…!!」
服部「前半の話聞いてた!?アンタ別嬪だっつっただろ!興味ねぇんだよ!!」
自らの両腕を抱えて身の危険を感じたように半歩後ろずさる葵咲。完全に前半の『別嬪さん』は聞いていなかった模様。それに対して怒りをあらわにする服部なのだが、そんな服部に対してまたもや感情を逆撫でするような意見を述べる。
葵咲「えっ。目、見えてます?前髪切った方が…。長すぎて目に入って視力落ちちゃってるとか?」
服部「見えてるわァァァァァ!!つかどんだけ過小評価してんだよ!もっと自分に自信持て!!って何で俺がお前を励ましてんだァァァ!!」
ひとしきり盛大にツッコんだ後、服部は深くため息をつく。そして親指でくいっと屋敷内を指し、あがるよう促した。
服部「…とにかくあがれ。」