第58章 To LOVEるは男のロマン。
翌日、土方はとある場所へと足を向けた。着いた先は元お庭番の頭、服部全蔵の家だ。
訪れた土方を服部は何も言わずに屋敷の中へと招き入れる。どうやら事前に連絡していたらしい。土方は客間へと通された。席に着くや否や土方は本題へと入る。今回土方がここへ訪れたのは、服部に仕事を依頼する為だった。そしてその依頼内容を聞いた服部は、想定していなかった依頼内容に思わず目を丸くする。
服部「女を匿え?」
服部の鸚鵡返しに、土方は眉一つ動かさずに淡々と応えた。
土方「ああ。護衛も兼ねて頼みたい。お前は元お庭番衆と聞く。これぐらい朝飯前だろ?」
服部「まぁそうだな。幕府の用人である真選組の依頼とあっちゃ願ったり敵ったりだが…。そんなに重要な人物なのか?将軍様の命(めい)か何かか?」
これは久々に腕のなる大仕事だ。そう思った服部は、内心わくわくしながら自らの顎ヒゲを撫で、ニヤリと笑う。
土方「いや…。うちの女隊士だ。」
服部「隊士?隊士なら屯所で十分じゃねぇのか?他の連中もいるし、護衛の必要なんざねーだろ。」
正直、拍子抜けだった。てっきり将軍家に関連する人物だと思っていたのだが。しかも隊士とはどうにも解せない。同じ屯所内に不逞の輩がいるという事なのだろうか。色々な憶測が頭の中を駆け巡る。服部は土方から事情を訊き出そうとするが、土方は多くを語ろうとはしなかった。
土方「色々事情があってな。余計な詮索はするな。」
服部「あ。…ひょっとしてアンタのコレか?」
クイッと右手小指を立ててなおも問い質す服部。真選組の依頼かと思いきや、単なる土方個人の依頼か?そう思った服部は少し呆れ顔だ。そんな服部の様子を見て土方は一瞬イラっとした表情を浮かべる。
土方「ちげぇよ。余計な詮索はすんなっつってんだろ。」
服部「あーはいはい。社内恋愛的なアレね。そりゃ詮索されりゃ困るわな。内緒のお付き合いだもんな。」
土方「だから違うっつってんだろうが。いい加減にしろよ。」
目に見えて苛立ち始める土方。だがそれには構わずに話を続ける服部。
服部「そんな大事な女を一人身のこんな得体の知れねぇ男のところに預けていいのか?俺の方がある意味危険かもしれねぇぜ?」
土方「いい加減にしろよテメー!!ちげぇっつってんだろ!しつけーよ!!勝手にそのセンで話進めてんじゃねェェェ!!」