第57章 先入観で物事を判断すると、ろくな事がない。
山崎の断末魔を聞きながら一番隊隊士達は解散。総悟も頭をポリポリと掻きながら葵咲へと向き直る。
総悟「とりあえず俺は次の仕事に行きやす。葵咲、ホントにこれ以上の餌付けはやめてくだせぇ。中にはまだ虚勢手術出来てない野良もいて繁殖しちまってここらへんの連中、困ってるんですから。」
葵咲「…ごめんなさい。」
そうして総悟も歌舞伎寺を後にした。総悟の背を見送りながら葵咲が今後の事を考えていると、寺の陰から葵咲へと呼び掛ける声があった。
桂「葵咲。」
葵咲「ちょ、たろちゃん!今はマズイって…!」
総悟達一番隊はその場を立ち去ったが、土方と山崎はまだこの場にいる。今出てくるのはマズかろう。葵咲は土方達の様子を慌てて目で追いながら、小声で桂の呼びかけに答えた。桂は物陰に隠れたまま静かに言葉を続ける。
桂「高杉の情報には目を光らせておけ。」
葵咲「!」
想像していない言葉だった。葵咲は目を見開き、地面へと視線を落とす。そんな葵咲には構わず桂が続ける。
桂「ヤツが宇宙へ出たという情報を得た。何を企んでいるのかは分からんが…ヤツの事だ。攘夷に関与している事で間違いなかろう。あと、田中の方もな。最近春雨とは別の海賊が出現しているらしいのだが、その海賊と田中が接触を図ったそうだ。ま、こちらは風の噂程度でしかないが。」
桂の情報を飲み込み、考え込むように押し黙る葵咲。葵咲は眉根を寄せて複雑な表情を浮かべる。