第57章 先入観で物事を判断すると、ろくな事がない。
桂「どちらも現段階では確かな情報とは言い難い上、俺達にどれ程の影響をもたらすかは分からん。だが、用心するにこした事はないだろう。特に、今真選組に身を置くお前はな。いずれ敵対する相手になろう。」
葵咲「・・・・うん…そうだね。」
桂「・・・・・。」
押し出すようなその声は少し震えていた。高杉と一度対峙したとは言え、やはりまだ迷いがあるように思える。その事が声の様子から伝わってきた。桂は少し考えた後、深く目を瞑って葵咲に優しい言葉を投げ掛ける。
桂「案ずるな。奴らがお前を狙うというのなら、俺は迷う事無く、お前につく。」
葵咲「えっ!?でも…!」
葵咲の今置かれている立場は真選組。そして桂は攘夷志士だ。紅桜編での抗争を知らない葵咲は、てっきり桂は高杉側につくと思っていた。予想外の桂の言葉に、葵咲は内心戸惑ってしまう。そして桂は補足説明を行なうように言葉を継ぎ足した。
桂「あくまでお前自身が狙われる場合の話だがな。単に鬼兵隊と真選組が衝突する事になろうとも俺はどちらにもつくつもりはない。」
葵咲「たろちゃん…。」
桂と高杉との現在の関係を知らない葵咲だが、桂の心強い言葉には信頼性を見出せた。葵咲は安心したように顔を少しほころばせる。二人がそんな会話を交わしていると、葵咲を探す声が聞こえてきた。
土方「葵咲ァァァ!仕事サボって何処行きやがったァァァ!?」
桂「ほら、呼んでいるぞ。」
葵咲「うん。ありがとう。」
葵咲は土方のもとへと戻り、桂は静かにその場から立ち去った。