第57章 先入観で物事を判断すると、ろくな事がない。
葵咲が言葉を詰まらせ言い淀んでいると、代わりに総悟が説明を加えた。
総悟「葵咲は近所迷惑考えず、野良猫に餌を撒き散らしてたんでさァ。」
全てを暴露されてしまえばもう言い逃れは出来ない。葵咲は魚屋の夫人に、予め頼んでいたのだ。餌を求めて訪れる猫達に魚を上げて欲しいと。植木鉢が落ちてきた事件については野良猫達の仕業だ。葵咲(しんせんぐみ)を敵と見なしていた賢い野良猫は、葵咲の頭上から植木鉢を落とし、暗殺を試みたのである。
葵咲は悔しそうに両手を地面についてうなだれた。
葵咲「だって!可哀想じゃんかァァァァ!!私には…無理だよ…!!あの仔達を放っておくなんてェェェェ!!」
土方「つーか奴らって野良猫の話だったんかィィィィィ!!攘夷浪士は!?」
思わずぶっちゃける土方。その発言を聞いて総悟は呆れたような顔になる。
総悟「攘夷浪士?何寝ぼけた事言ってんですかぃ。寝言は寝てから言ってくだせぇ。」
土方「あぁ!?」
土方の発言は全て本音なのだが、葵咲は頬をピンクに染め、ニコニコしながらキラキラした眼差しを土方に向ける。
葵咲「照れなくて良いよ~♡土方さんも肉球マニアだったんだね♡」
土方「とりあえずオメーは黙ってろ!何か腹立つ!!」
ここで状況を整理し、土方はこうなるに至った事情を説明した。そしてその話を聞き、総悟は確認を取るように土方へと言葉を返す。
総悟「要するに土方さんは、ここら一帯を荒らしてる野良猫の事を勝手に攘夷浪士と勘違いしちまってたって事ですねぃ?」
土方「勝手にじゃねぇよ。元はと言えばだな…。」
そろ~り、そろ~り…。極力音を立てないように気を張りながらその場から逃げ出そうとする山崎。だがその決断は遅かった。山崎の背後に土方がヌッと姿を現わす。そう、元はと言えば山崎の報告が誤報であった事によるものだ。山崎の誤った報告さえなければ、こんな怪我を負う事も無かっただろう。土方の怒りは極限に達していた。
土方「や~ま~ざ~きィィィ~…。何処に行くつもりだ・・・・?」
山崎「ヒィッ!ふ、副長!お、落ち着いて下さい!だっ、だって仕方ないじゃないですか!あんなの誰が見たって…!!」
土方「言い訳は無用だァァァァァ!!」
山崎「ぎゃあああァァァァァ!!!!!」