第57章 先入観で物事を判断すると、ろくな事がない。
野良猫達の攻撃全てを全身で受けた土方は顔等肌が出ているところは引っかき傷だらけ、制服もボロボロになった。予想だにしていなかった展開に最初は面食らっていた総悟だったが、土方がボロボロにされるというシチュエーションはおいしい。総悟は止めに入る様子もなく、そんな面白い光景をニヤニヤしながら見つめていた。一方、葵咲は状況が掴めずぼーっとしてしまっていたが、途中でハッと我に返り、猫達の攻撃を沈静化させた。そしてその隙に桂は何処かへと消えてしまったのだった。
野良猫の世話をしている際に葵咲も何度か噛まれたり引っ掻かれたりしていた。その際に歌舞伎寺に置いて使用していた救急箱が役に立った。それを使って葵咲は土方の傷の手当を行なうが、土方の機嫌はすこぶる悪い。ムスッとした表情で総悟を睨み付けた。
土方「…おい。どういうことだ、これは。」
土方からの質問に、総悟はフゥとため息を吐きながら肩を上げる。
総悟「どうもこうもねぇや。そりゃこっちの台詞ですぜぃ、土方さん。折角奴らを根絶やしに出来るチャンスだったってのに。逃げられちまったじゃないですか。」
土方「オメーは仕事サボって何してやがんだって話だよ!」
総悟「俺ァ、サボってなんかいやせんぜぃ。近隣住民の苦情を受けて、ここらへんの野良猫駆除をしてたんでさァ。むしろ仕事サボってたのはこっちですよ。」
クイっと総悟が親指で指すのは葵咲の顔。指差されてギクリとする葵咲。葵咲の背中に冷たい汗が流れた。
そして土方は鋭い目つきのまま葵咲の方へと視線を移す。
土方「…オメーは何してたんだ?」
葵咲「いや、あの…そのぉ・・・・。」
とても言い出しづらいといった様子で視線を泳がせながら左右の人差し指をツンツンと合わせる。