第57章 先入観で物事を判断すると、ろくな事がない。
総悟「俺と付き合えねぇ理由は?俺の事、嫌いじゃないんでしょ?嫌いじゃないなら、とりあえず付き合ってみるってのもアリだと思いやすよ。」
葵咲「そんな…いい加減なこと出来ないよ。」
総悟「俺に失礼だ、とか考えてるならそんなのいりやせんよ。付き合ってるうちに落とす自信あるんで。」
葵咲「・・・・そうじゃ…なくて・・・・。」
深く俯き、暗い表情を浮かべる葵咲。ただ単に総悟が無理だと言っているわけではないようだ。だが、今これ以上深く問いただす事は逆に心が離れてしまいそうだと思った総悟は、ここで自らが引き下がる事を選択する。
総悟「…分かりやした。ひとまず今日のところはこれくらいにしといてあげますよ。」
そう言われて顔を上げる葵咲。だが、『ひとまず』というフレーズが引っ掛かり、その事を復唱するように言葉を返す。
葵咲「今日のところはって…。」
総悟「葵咲が一筋縄ではいかない事くらい承知でさぁ。俺、諦めは悪い方なんで。覚悟しといてくだせぇ。」
それ以上は何も言わず、総悟は葵咲に背を向けて歩き出した。だが数歩歩いたところで何かを思い出したように振り返る。
総悟「ああ、それから…。」
葵咲「?」
総悟「葵咲が今誰の事を想っていても、何をしようとしてても構いやせんが…。もう敵対するのだけは…ごめんですぜぃ。」
葵咲「! …総悟君。」
総悟のその意味深な言葉が何を示しているのかを、葵咲は分かっているようだ。葵咲はその言葉を深く受け止め、右手に拳を作る。そして自らの胸の前できゅっと更に強く握った。
総悟「俺達真選組は、腐っても警察。市民を守るお役目って事を忘れないでくだせぇ。」
葵咲「・・・・うん。」
(山崎:・・・・・。)
二人の会話を聞ききながら、山崎は考え込むように総悟と葵咲の姿を交互に見つめていた。