第57章 先入観で物事を判断すると、ろくな事がない。
そこまで噛み砕いて言われて初めてその意味に気付く葵咲。葵咲は顔を真っ赤にしてあわあわと言葉を押し出した。
葵咲「ちょ!何言ってんの!?てか、こないだのデートよりお願いがレベルアップしてるんですけど!?」
総悟「“お願い”じゃなくて“命令”でさァ。」
ニヤリ。
そう言って浮かべる笑みはドS王子のドス黒い微笑だった。総悟がS体質な事は葵咲も知っている。だが、その矛先が自分に向けられたのはこの時が初めて。今までとは違った総悟に葵咲は驚きを隠せなかった。
葵咲「えぇぇぇ!?総悟君、こないだの時と何かキャラ変わってない!?」
総悟「こっちが地でさぁ。優しくしたところで葵咲はおちないって分かったんで。これからは遠慮なく素の自分で葵咲を堕とそうと思いやしてね。」
葵咲「“堕とす”の字が違う気がするんですけどォォォ!?」
攘夷浪士との関連性を調査しているはずが、話がとんでもない方向へと展開していく。
(山崎:あのバカ何やってんのォォォォォ!!??)
そんな様子を陰から見ていた山崎は、当然の事ながらその場に出て行って止める事は出来ない。心の中でツッコむ事しか出来なかった。今回の尾行が始まってから山崎は一度葵咲に接触している。ここでも接触すれば不自然なこと山の如しだ。山崎は直接ツッコみたい衝動をひたすら押さえ込む。ここでドス黒い笑みを浮かべていた総悟は普段の表情へと戻し、もう一度葵咲に問い掛けた。
総悟「で?返事は?」
葵咲「…っ。ごめん、私は…お付き合いは出来ない。」
これも想定内の回答。だが『はい、そうですか。』と、簡単に引き下がれるものでもない。総悟は、真剣な眼差しで断るわけを尋ねる。