第56章 優しさは時に相手につけこまれる。

土方「そいつはまだ分からねぇ。本人が言ってたんだろ？『頭じゃ分かってるが放っておけねぇ』って。」

山崎「副長…。ですが・・・・！」

土方「分ーってるよ。心配すんな、葵咲（あいつ）自身を疑ってるわけじゃねぇ。奴らの事だ。あいつの優しさに付け込んで適当な理由作って金出させてんだろうよ。」


葵咲を擁護しようとする山崎に対して、今度はいち個人としての意見を述べる土方。先程の意見はあくまで真選組副長としての意見。土方自身は葵咲を信じているのだ。その事が山崎にも伝わり、山崎はひとまずほっとため息を吐く。


山崎「…そうですね。葵咲ちゃん、深刻な顔してましたし…。俺、そいつらが許せないです…！！」

土方「・・・・・。」


膝の上で硬く拳を作り、畳の上を睨みつける山崎。山崎の憤りは土方も同じだった。そして土方は山崎の気持ちを酌んだ上で次の指示を出す。


土方「とにかく、もう暫く葵咲の動向を探ってくれ。それから、桂と接触した場合についてだが、一旦見逃せ。その様子じゃあ一回限りの接触で終わるってこたぁねぇだろう。一度泳がせて更に情報を引き出せ。いいな？」

山崎「分かりました。任せて下さい！」


土方は静かに頷き、山崎は土方の部屋から出て行った。