第56章 優しさは時に相手につけこまれる。
葵咲と桂が幼馴染である事はまだ知らない土方達。
だが、土方は葵咲と初めて出会った時の事を思い出した。
土方「そういやぁ奴は葵咲にボディガード依頼してた事があったな。」
山崎「ええ。それに、葵咲ちゃんが入院してた時も接触しようとしてましたよね。」
土方「・・・・・。」
そういえばそんな事もあった。山崎に言われて葵咲が入院していた時の事を思い出す。葵咲が望まずとも相手側から接触してくる可能性が多いにあるのだ。
これは桂に限った事ではない。高杉や古兵衛もそうだ。葵咲の生い立ちがそうさせるのか、葵咲は攘夷志士を引き寄せてしまう性質なのである。そしてそんな杞憂な生い立ちと今の立場故、足元を見られる事もあるだろう。
その事が頭に過ぎった土方は唸るように言葉を押し出す。
土方「まぁ…葵咲自ら、奴らの行動に加担するとは思えねぇが…脅されてるって可能性は否めねぇか…。」
その言葉を聞いて山崎は静かに頷いた。
そして先程とは変わらぬ真剣な面持ちで指示を仰ぐ。
山崎「どうします?」
土方「そうだな、しばらく葵咲の様子を張ってくれ。もし桂と接触したら桂を抑えろ。葵咲には後から事情聴取すりゃあいい。」
山崎「分かりました。」
それ以上の会話はなく、山崎は静かに部屋を出た。