第55章 自分の事は案外自分よりも他人の方がよく分かっている。
総悟「なんで…なんで姉上じゃなかったんだ、なんで姉上じゃダメだったんだ…ってね。」
近藤・山崎「!」
総悟の言葉にハッとなる近藤と山崎。総悟の複雑な心境がじわりと伝わってくる。二人は何も言葉を挟む事が出来なかった。
総悟「ヤローには姉上を幸せにしてやって欲しかった。姉上の気持ちに応えて欲しかった。姉上の死に際に…傍にいてやって欲しかった…。」
山崎「沖田隊長…。」
近藤「・・・・・。」
総悟「葵咲が瀕死の重態になった時は、ずっと傍にいた。けど、姉上が息を引き取る時は、傍にはいなかった。あの時は確かにヤローは姉上の事想ってくれてたのに。その違いは何なんだって…ずっとモヤモヤしてた。だから…今回試したかったんですよ。もし葵咲が俺を選んだなら、ヤローは身を引くのかってね。ヤローは姉上の幸せを願って身を引いた。自分が姉上を本当に幸せにしてやれないって思ってたからこそ、本当に姉上を想っていたからこそ…。今回も同じなら…葵咲の事を想うなら同じ行動に出るかってね。」
比べずにいようと思っていても、人と人とを比べてはいけないと頭では分かっていても、無意識のうちに比べてしまうのが人の性。しかもその二人というのが似ている二人で、一人が身内、一人が気になる女性だったなら尚の事だ。総悟でなくても比べてしまうだろう。
総悟は頭の中のモヤモヤを取り払う為に、これからもっと前へと進んでいく為にも、それをハッキリとさせたかったのだ。土方や葵咲の気持ちもハッキリとさせておきたかった。
そしてその結果が今回如実に現れた。
総悟「でもどうやら今回は勝手が違うみたいでさぁ。」
何となく予想出来ていた“答え”。受け入れる覚悟はある程度していたものの、いざそれを目の当たりにすると、苦しいものがある。