第55章 自分の事は案外自分よりも他人の方がよく分かっている。
それを見た土方はコートから出て試合を放棄し、葵咲の方へ向かって走り出した。
土方「葵咲ァァァァ!!」
総悟「!?」
自動で行なわれている総悟の攻撃はやむことはなく、土方へと直撃する。鉄球やタバスコ、まきびし入りの攻撃を喰らいながらも土方は走る速度を緩める事無く、葵咲の落ちてくる真下へと滑り込む。そして上手い具合に葵咲を受け止めた。
ドサッ!!
葵咲「いったたた…。土方さん!?どうして…。」
自分の下に土方がいるという状況に驚く葵咲。土方は決闘中であったはず…。状況が掴めず、土方の上に乗っかったまま、きょとんとした顔をしてその疑問をぶつけた。だが、土方はそっくりそのまま台詞を返す。
土方「そりゃこっちの台詞だろうが!何やってんだよ!!」
葵咲「男の子が風船飛ばしちゃって、それが木に引っ掛かってて、それを取ろうとして…。」
咄嗟の追求に、説明がしどろもどろになる。断片的ではあるが、何故橋の上から落ちるに至ったのかを把握した土方は、葵咲の無事を安堵しながら葵咲を叱った。
土方「だからって無茶しすぎだろ!」
葵咲「ご、ごめんなさい…。」
土方「ったく…。もっと自分の身体、大事にしろよ。」
叱られてシュンとしてしまう葵咲だが、それが自分の身を案じてのモノだと分かり、暖かい気持ちに包まれた。
葵咲「うん…。ありがとう。でも…土方さんも自分を大事にね。」
土方「あん?」
雪玉の攻撃を受けながら走りこんだ事を言われているのだろうか?それとも滑り込みながら葵咲を受け止めた事を言っているのだろうか?土方が葵咲の言葉の意味を考えていると、葵咲がその言葉の意味を詳しく説明した。