第55章 自分の事は案外自分よりも他人の方がよく分かっている。
その声を聞いた近藤達は話すのを止め、再び河川敷へと視線を移す。先程までは土方と総悟の二人しかいなかったその場に山崎の姿があった。この勝負を公平に判定してもらう為、土方が呼び寄せたのだ。相手は総悟、どんな手段を使ってくるか分からない。卑怯な手を使わせない為にも、審判が必要だと思ったのである。
山崎「えー。審判は俺、山崎が務めさせてもらいます。ルールは簡単。雪玉で撃退すれば勝利。つまり、雪玉に当たった方が負けです。また、このコート内から抜け出した方も試合放棄とみなし、場外負けとさせて頂きますのでご注意下さい。じゃあ…。始めェェェェェ!!」
開始の合図と共に、最初に動いたのは総悟。総悟は傍らに積んであった雪玉を一つ掴み、土方目掛けて投げ付ける。玉のスピードは遅く、雪の壁に隠れるまでもない。バカにされているとさえ感じた。少し苛立った様子で土方は総悟に言葉を掛ける。
土方「フン、そんなひょろっちぃ玉で俺が倒せるとでも…」
余裕の表情でひょいっと避けたその時、地面に落ちた雪玉は鈍い音を放った。ゴッ!!その音に耳を疑う土方。思わず落ちた雪玉の方へと目を向けた。
土方「え。」
雪玉の雪が剥がれ落ちてその内から鉄の玉が顔を出す。なんと、雪玉の中に鉄の玉が仕込まれていたのだ。目を疑うその光景に、土方はその場に呆然と立ち尽くす。
土方「ちょ…、えええぇぇぇぇぇ!?」
ようやく思考が追いつき、驚きを叫び声と変える土方。だがそんな土方の叫び声など無視し、総悟は攻撃を続けた。飛んでくる雪玉には勿論、何かしら仕込まれている。それは鉄球であったり、まきびしであったり様々だ。当たったらただではすまない。土方はひとまず雪の壁へと身を隠した。そんな土方を見て総悟は攻撃を続けながら呼び掛けた。