第55章 自分の事は案外自分よりも他人の方がよく分かっている。
一度は近藤の方に目をやった二人だが、すぐさま視線を戻して再び睨み合う。異様なまでの殺気を放っていた。
だが近藤はその事にツッコまずにはいられなかった。だって明らかにおかしい。決闘と聞き、てっきり自分と同じく真剣勝負だと思ったのに。二人の傍らにあるのは沢山の雪玉と、その雪玉を防ぐ為の雪の壁だ。
近藤は橋の欄干を掴み、身を乗り出しながら叫んだ。
近藤「男の勝負って…雪合戦じゃん!その脇に積んである雪玉投げあうんだよね!?ただの…雪合戦じゃんんんん!!」
「なんで2回言ったの?」
ツッコむ近藤に更にツッコむ通行人。そんな通行人のツッコミは無視し、二人の様子をじっと見つめる近藤。一体どういう成り行きでこうなるに至ったのか。二人に問い掛けようにも二人はもう近藤の方に目もくれない。
近藤が心配そうな顔を浮かべていると、近藤のもとに葵咲が駆け寄ってきた。葵咲は近藤のいる場所とは少し離れた場所から二人を見ていたのだが、先程のやり取りで近藤がこの場にいる事を知って、彼のもとへと駆け寄ってきたのだ。
葵咲「近藤さん!」
近藤「葵咲!?」
葵咲「二人を止めて下さい!!」
近藤「お前、事情を知ってるのか?一体何が…。」
葵咲「それが、その…私のせいでなんです・・・・。」
近藤「!?」
申し訳なさそうな顔を浮かべて俯く葵咲。近藤はそんな葵咲の肩に手を置き、心配そうな顔を向けた。
近藤「どういう事だ??」
ワケを訊こうと葵咲の顔を覗き込んだその時、見物人の一人が橋の下を指差しながら叫んだ。
「おっ!始まるみてぇだぞ!」
近藤・葵咲「!!」