第1章 自分のそっくりさんは世の中に三人はいる。
「本当にごめんなさい!!私弁償しますから・・・あの・・・?」
女の顔は、よく知っている顔だった。過去、自分の惚れた女の顔。そう、先日亡くなった沖田総悟の姉、沖田ミツバの顔に瓜二つだったのだ。
だが、ミツバは先日病で確かに亡くなった。こんなところにいるはずがない。それによく見れば、髪型、髪色、声色はミツバとは違っていた。髪の色は焦げ茶、髪型は少し外側にはねた感じのくせっ毛で肩ぐらいまでの長さだ。声色はミツバよりは少し高めで可愛らしい声だった。
「もしもーし、私にもマヨついてますか??」
女の言葉に我に返った土方は、女から視線を外し、答えた。
土方「あ、いや…ワリィ。ちょっと知り合いに似てたもんでな。」
そう語る土方の表情は、寂しさを含んでいた。無理もない。ミツバの死から、あまり日が経っていないのだから。
「じゃあその方・・・残念な方なんですね…。」
土方「おーい。その謙遜失礼だろ。」
女は自分の器量は悪いと思っているらしい。少し天然の入った女の返しに、土方は少し呆れ顔だ。その時、土方の脳裏に別の記憶が過ぎった。
土方「…ん?つかお前どっかで逢ったこと・・・」
何処で会ったのかは思い出せない。だが、確かにこの瞳を見た事がある気がした。
「えっ!うそっ!!どうしようおばちゃん!!私もしかして生まれて初めてナンパされてる!?」
顔を真っ赤にして答えた女は、本気のようだ。どうやら少しではなく、この女、相当天然らしい。
土方「するかァァァァァ!!なんでそうなるんだよ!!」
「お前の事を前世からずっと探し続けてた。俺はお前を覚えている。的な感じでは?」
土方「ちげーよ!!どんな夢見てんだ!!やっぱ勘違いだったわ!てめーみてぇな失礼な奴今まで逢った事も見たこともねぇわ!!」
カッとなった土方の脳裏からは、その記憶は一瞬で消え去ってしまった。
土方「つーかお前さっさと金払え!!クリーニング代と土方スペシャル代!心の慰謝料含めて割増で!!」
「あっ、スイマッセン。えっと、おいくらで・・・あっ・・・・・。」
土方「・・・・・え?」
財布の中を見た女の表情が一瞬で凍りついた。