第1章 自分のそっくりさんは世の中に三人はいる。
事件の翌日、土方はその日休日であった為、私服でいつもの定食屋へと足を運んだ。
土方「いつものやつ頼む。」
「はいよ。アラ土方さん、今日はオフかい?」
店長の横で手伝いをする、店長の奥さんが土方へと話しかけた。
土方「ああ。特に何もするこたぁねーんだけどな。」
「そーかい。はい!土方スペシャル一丁!!」
注文してから、料理が一瞬で出てきた事については、特に突っ込まないで欲しい。シナリオ進行上、料理する時間で引っ張っても仕方がないので、すぐさま料理を出させてもらっただけだ。
土方が何気なく料理…と呼べるのかは定かではない代物の、土方スペシャルに箸を伸ばそうとしたその時だ。店内を威勢のいい女の声が響いた。
「おばさん!ごちそうさまでした~!」
「はいよ!あ、皿はそこ置いといていいよ。」
おばちゃんにそう言われた女だったが、女は聞かず、お盆に乗った丼皿をお盆ごと、おばちゃんの元に運ぼうとした。
「いえいえ!これくらいどーってこと・・・」
その時だ。女は足を椅子に引っ掛けてしまい、転んでしまった。
ガッシャーン!女はお盆をしっかりと手に掴んでいたが、転んだ拍子で丼皿は、あろうことか土方の方へと飛んでいってしまった。
宙を舞った丼皿は、見事、土方の愛する土方スペシャルに命中。マヨネーズが土方の着物にたっぷりと飛び散ってしまったのだった。
土方「アアアアア“っ!!てめっ!!何しやがんだァァァァァ!!!」
土方が怒るのも無理はない。まだ一口も食べていない大事な土方スペシャルがめちゃくちゃにされたのだ。いや、それだけならまた注文し直せば良いだけのことだが、自分の私服を汚されたのだから怒りが頂点に達したのである。
「わーっ!!ごっ!ごめんなさいィィィィ!!!わざとじゃないんです!!」
焦った女は、ただひたすらに頭を下げて謝った。
土方「ったりめーだろ!こんな事わざとされてたまるかって・・・」
土方が最後まで言葉を発する前に、発言を止めたのは、その女が顔を上げており、女の顔を見たからだった。そう、その女の顔に見覚えがあったのだ。