第52章 疲れてる時はどんな状況だって眠れる。
不自然ともいえる葵咲の行動に、土方は固まる。葵咲は昨夜からの土方の温もりを思いだし、土方の顔を直視する事が出来ない。顔を真っ赤にしたまま俯いてしまった。
葵咲「・・・・・。(カ~ッ!!)」
土方「・・・・おい。何かあったか?」
葵咲「なっ!何もないよ!何もっ!!」
明らかにおかしな様子の葵咲にワケを尋ねる土方だったが、断固として何も答えない。まぁ答えられない、といった方が正しいのだが。
首を激しく横に振る割には、相変わらず真っ赤な顔で俯く葵咲に、土方は心の中で叫んだ。
(土方:いや!絶対何かあっただろォォォォ!!何したの俺!全然覚えてねぇんだけど!!思い出せ、俺…ダメだ、全く思い出せねぇ!!)
思い出せないのは無理もない。寝ぼけていたのだから。実際は後ろから抱き締めていただけにすぎないのだが、それ以上の事を想像してしまう土方…。顔から大量の汗が滴り落ちた。
土方「な、なぁ…ホントに何もなかったのか?」
葵咲「なっ!ないってば!」
『意識して眠れなかったとか言えるわけないじゃん!』葵咲はそう、心の中で叫ぶ。が、勿論口に出せる発言ではない。言葉を飲み込んで立ち上がった。そしてそれにつられるように土方も立ち上がる。
土方「嘘吐けェ!俺、何かしたのか!?何かしたんだろ!はっきり言えよ!!」
葵咲「ホントに何もないんだってば!」
問い詰められる事に焦りを感じた葵咲は、自室の襖を勢いよく開き、表に出る。当然の事ながら、手錠で繋がっている土方も一緒に部屋から出る事になる。
そして土方は葵咲の肩を掴み、自分に向き直らせて怒鳴った。
土方「じゃあ逃げんな!なんで目ェ逸らすんだよ!?」
葵咲「それは・・・・っ!!だから何でもないの!!」
土方「俺がお前に何かしたんだ…」