第52章 疲れてる時はどんな状況だって眠れる。
カチカチカチカチ…。
静かな部屋の中で、時計の針の音だけが鳴り響く。
(葵咲:…何時間経ったかな?もうそろそろ朝かな?)
布団の中から手を伸ばし、時計を手に取る葵咲。だが、その期待は簡単に裏切られ、目を見開く事になる。
(葵咲:…まだ十一時!?てかまださっきから三十分も経ってないし!長い!長すぎるよ!!)
仕方なく時計を置き、再び布団の中へと入った。
(葵咲:いや、落ち着け、落ち着け私!目を瞑って呼吸を落ち着かせればきっと眠れる。いつもしてることじゃない。ヒッヒッフー、よ。ヒッヒッ・・・・)
深く目を瞑り、呼吸を落ち着かせようとする葵咲。
その時、慣れない感覚が身体に走った。
葵咲「!?」
ぎゅっ。突如後ろから抱き締められたのだ。
葵咲「…え?」
予想だにしていなかった出来事に、葵咲は目を開く。その腕を振りほどこうとするが、きつく抱き締められていて振りほどけそうにない。どうやら土方は寝ぼけているようで、全くの無意識のようだ。
葵咲「ちょ、土方さん!?あのっ!!」
土方「んーーー…。スー…スー…。(ぎゅうぅっ)」
葵咲を抱き枕の如く、きつく抱き締める土方。この日は相当疲れが溜まっていたのだろう。葵咲は土方に自分を離してくれるよう小声で頼んでみるものの、爆睡状態で全然起きる気配は無かった。布団の中での密着状態。しかも葵咲の耳に土方の吐息がかかる。心臓の鼓動は早くなるばかりだ。お互い、制服のままの就寝とはいえ、抱き締められれば体温は伝わってくる。その温もりを感じ、葵咲の胸はきゅっとなった。
(葵咲:…あったかいな・・・・。こんな温もり…あの時依頼・・・・・。)