第52章 疲れてる時はどんな状況だって眠れる。
屯所へと帰り着き、二人は人目に触れないよう、細心の注意を払いながら葵咲の部屋のある離れへと向かう。
土方の部屋は、いつ誰が訪れるか分からない。ノックもなしに襖を開けられる可能性だってある。だが葵咲の部屋なら流石にいきなり開けられはしないだろう、ということで葵咲の部屋へと戻る事にしたのだ。
ホテル等、何処か別の場所へ泊まる事も考えたが、万が一出入りしているところを誰かに見つかりでもしたら間違いなく誤解される。その方がリスクが高いと考えたのだ。
部屋へと入り、一先ず畳の上へと腰を下ろす二人。土方は胡坐を掻いてゆったりと座っているのに対し、葵咲はガチガチに正座していた。そんな葵咲の様子を見て土方は、片眉を上げて怪訝な顔をした。
土方「? どうかしたか?」
急に声を掛けられ、背中をピンと張る葵咲。ビクッとして土方の方へと目を向けた。
葵咲「えっ!?別に!?何も!?」
土方「?? そうか?」
明らかに様子がおかしい葵咲だが、その事に土方は気付いていない様子。葵咲の言葉をそのまま受け取り、視線を逸らして欠伸をした。一方葵咲は、心臓をバクバクさせながら考えを巡らせる。
(葵咲:よ、よくよく考えたら凄い状況なんだよね!?コレ!!全然ちゃんと考えてなかったけど!どうしよう~~~!!)
同じ部屋で一夜を共にするという事の意味に気付いたのだ。葵咲は正座したまま、顔を真っ赤にして膝の上でぎゅっと両手に拳を作って俯く。そんな葵咲のおかしな態度に、やっと土方も気付いた。土方は再び葵咲に声を掛ける。
土方「おい。葵咲?」
葵咲「ひゃぁぁぁァァァァァ!!」
声を掛けられて再び跳ねるように驚く葵咲。その驚き声に土方は驚かされてビクッ!となる。
土方「なっ、何だよ、どうした?」
葵咲「いっ、いや!何でも!?」