第52章 疲れてる時はどんな状況だって眠れる。
松平や近藤の言葉を思い返しながら土方は考える。
(土方:コイツは何も知らねぇ…だが天導衆の奴らは知ってる…。奴らも吉田松陽と何か関連があるって事か?…いや、市村家の方か。幕府に国を売るよう促した市村家、もしかして天導衆と繋がりが…?)
考えれば考える程に分からなくなる。今の土方には吉田松陽についても、市村家についても情報が少なすぎるのだ。それに、高杉についても…。疑問点が多い。ピースが不足した状態でパズルを完成させようとしても出来上がるはずがないのと同じ事。下手をすれば誤った場所にピースをはめ込んでしまう可能性だってある。土方はこの場で結論を出すのは止め、状況整理と疑問点だけを確認しておくことにした。
そうこうしているうちに、注文した料理が出される。土方は考え込むあまりに自分の世界に入り込んでしまっていた為、無意識に左手を自分の方へと引いて、おわんを掴もうとした。
土方「あっ!悪ィ…。つい・・・・。」
自分が左手を引くという事は、葵咲は右手を引っ張られるという事。食事が出来なくなってしまう。土方はハッと我に返って葵咲に謝ったのだった。だが、葵咲は何も問題はないといった様子で土方に返す。
葵咲「ん?別にいいよ。左で食べるから。」
土方「そうか。…え。お前、箸は左利きだったか?」
パッと葵咲の方に目を向けると、左手で箸を握ってもう天丼を食べ始めていた。葵咲は土方の質問に対して首を傾けながら答えた。
葵咲「うーん、正確には左を右に治した、かな。」
土方「刀もか?」
葵咲「ううん、刀は元々両刀。でも利き腕は左だったから、攻撃のメインは左だったけどね。」
笑顔で応えていた葵咲だったが、ここで真剣な顔つきに変える。