第51章 心頭滅却すれば刀にもなれる。
松平「…女の名は?」
近藤「市村葵咲だ。」
松平「! 市村…?」
近藤「ん?どうかしたのか?」
葵咲の苗字に反応する松平。その様子に気付いた近藤は怪訝な顔を浮かべながら尋ねる。
松平は思い当たる節を近藤に問い返した。
松平「市村ってお前、あの名門武家の市村か?」
近藤「え?さぁ、そんな話はしていなかったが…。」
松平「…近藤。もしその女が“あの”市村家の人間なら、罪を問われる事なく真選組に受け入れられる可能性は限りなく飛躍するぜ。」
近藤「本当か!?」
市村家については何も知らない近藤。だが咎められない可能性が飛躍するというのなら、それは願ってもない事。松平の言葉に近藤は飛びついた。
松平「かつて『市村家』は、あの柳生家と並ぶ程の名家だった。幕府のお墨付きだったからな。残念ながら攘夷戦争時代、“天人にやられて”一家は壊滅状態に陥ったと聞くが…。その生き残りってんなら真選組としても願ったり叶ったりだろうよ。」
近藤「・・・・・。」
二人の間に少しの沈黙が下りた。これはいけるかもしれない。二人の謀議に一筋の光が見えた。
松平「俺ァその女の身元を調べてみる。それまで何とかお前が誤魔化せ。」
近藤「分かった。」
そうして電話を切り、その後行動を起こした近藤と松平。それが功を制して葵咲の真選組への正式入隊が決まったのだった。