第51章 心頭滅却すれば刀にもなれる。
更に遡ること数日前。
伊東が倒れ、土方が隊に戻った数日後の話だ。近藤の携帯に一本の電話が入った。
近藤「はい、もしもし…とっつァん?どうしたんだ?珍しいな。」
松平「おい。どういうことだ?今回の伊東の件、隊士じゃねぇ女が関わってたみたいじゃねぇか。」
近藤「? 何の話だ?」
松平が何の話をしようとしているのか、皆目見当のつかない近藤。この時の近藤はまだ知らなかった。葵咲が攘夷志士討伐に参戦し、近藤と土方、そして真選組を救おうと戦っていた事を。
ぽかんとしながら松平の話を聞いていると、松平が苛立った様子で言葉を続けた。
松平「おいおい、とぼけたって無駄だぜェ。真選組で雇ってる女中が今回、大いに活躍して攘夷浪士共を片っ端から斬ったらしいじゃねぇか。」
(近藤:!? 葵咲ちゃんが…!!)
松平「活躍は大いに結構だが、女は真選組隊士じゃねぇ。そんな一般人の女が人斬り騒動。この意味が分かるな?」
近藤「!!」
意味深に放たれるその言葉の意味を瞬時に悟る近藤。何故わざわざ松平が電話を掛けてきたのか、それを考えるだけでも容易に分かる事だった。
近藤は慌てて松平を止めに入る。
近藤「ま、待ってくれ、とっつァん!!葵咲ちゃんは俺の、俺達真選組の為に戦ってくれたんじゃねぇのか!?何も悪くねぇよ!!」
松平「テメーらが女を護りてぇ気持ちは分かる。だがな、これは法律なのよ。法律を一番に護るべきお前らが違反してちゃ市民に示しがつかねぇだろうが。」
近藤「だが!」
松平「おじさんだってねぇ、女の子をみすみす処刑なんかさせたくねぇよ。けどその子、おじさんの所に挨拶にも来なかったじゃねぇか。」
近藤「…とっつァん、もしかして拗ねてる?」