第51章 心頭滅却すれば刀にもなれる。
時は遡ること数ヶ月前。
伊東の画策により、真選組内部が荒れた動乱編。そしてそれが収まった矢先、葵咲が逃亡した時の話だ。朝から葵咲の姿が見当たらず、そのわけを確認する為に土方は近藤の部屋へと訪れていた。土方が近藤を問い詰めていた際、松平から近藤へ電話が掛かってきた。
松平「おい、女は見つかったのか?」
近藤「い、いや、それが…まだ・・・・。」
松平「何やってやがんだバカヤロー!!野放しにしちゃ危険だろうが!いいか、草の根分けてでも見つけ出せ!指名手配でも何でもしろ、手段は選ぶな。何としででも“天導衆(ヤツら)”より先に探し出せェェェェ!!分かったなァァァ!?」
近藤「・・・・・。」
松平は電話越しに怒鳴り散らし、電話を一方的に切った。そして近藤は切られた携帯電話を暗い表情で見つめる。そのいつになく重苦しい雰囲気に、土方は心配そうな顔つきで恐る恐る近藤へと声を掛けた。
土方「近藤さん?どうしたんだよ、一体何が…。」
近藤「…実はな・・・・」
近藤は全ての事情を土方に説明した。動乱が収まった後も真選組隊内に伊東の間者と思われる者が残っていた事、その間者が土方の失脚を画策していた事、そして…葵咲が動乱の際に攘夷志士を斬った事により、その罪を問われ、天導衆が彼女の身柄の引渡しを要求している事を…。
土方「天導衆!?…奴らが…市村(アイツ)の処刑宣告してるってのか・・・・?」
近藤「正確には葵咲ちゃんの身柄を引き渡せと言ってきてるそうだ。」
土方「俺の事は分かった。だがなんで、アイツの件で天導衆が出てくんだよ?」
土方は耳を疑った。にわかには信じ難い話だ。天導衆といえば今や幕府を牛耳る陰の政権者。そんな大物が、たかだか真選組に仕える女中ごときを気に掛けるだろうか?土方は右手を顎に当て、唸るように考え込む。それに対して近藤は腕組みしながら首を横に振った。
近藤「…それは俺にも分からん。とっつぁんも知らねぇ様子だった。」
土方「・・・・・。」