第51章 心頭滅却すれば刀にもなれる。
このままでは埒があかない。そう思った葵咲は一つため息をつき、真剣な面持ちで土方へと視線を向けた。
葵咲「仕方ないですね…。土方さん、ジャンケンしましょう。」
土方「は?」
この局面で何を言い出すんだこの女は。土方の心情はまさしくソレである。土方が苛立った様子で葵咲の方を睨むと、葵咲は左手の人差し指をすっと立てて提案した。
葵咲「この手錠を外す方法があります。」
土方「本当か!?」
思わぬ朗報に土方の目が輝く。土方は期待に胸を膨らませて葵咲に視線を向けた。
葵咲はなおも真剣な表情で続けるが、その期待はあっさり裏切られる形となる。
葵咲「どちらか一人の…手首を切り落とします!」
土方「オメーはゾロかァァァ!アホ言ってんじゃねェェェェェ!!」
ONE PIECE、第42巻参照である。これはゾロとウソップが手錠で繋がってしまった時にゾロがウソップにした提案と全く同じだ。
だが、その後の提案がゾロとは違っていた。土方にとって何とも理不尽な提案が提示される。
葵咲「勿論土方さんは“グー”出してくれますよね?私は“パー”出すので。男ですもんね?女性に花持たせてくれますよね?宜しくお願いしますよ。『じゃんけーん…」
土方「それジャンケンの意味なくね!?」
『それなら回りくどい事言わずに最初からお前の腕を切り落とせって言えよ!』、そう言ってしまいたい土方だったが、それを言って実行されては困る。言いたい気持ちをぐっと抑えて、その言葉を放つのを堪えた。
二人がグダグダしている間にもひったくり犯の男は銃を発砲。二人は一先ず塀の陰に隠れて様子を窺う。