第51章 心頭滅却すれば刀にもなれる。
葵咲「あっ!ちょ!何するんですか!」
土方「何ってお前、刀抜こうとしてんだろ!」
ガチャガチャガチャ…。手錠で繋がっている二人は、各々で思うように動けない。葵咲は当然の事ながら右手で刀を抜こうとするが、土方がそれを邪魔するような行動を取る。土方は右手で刀を抜く際に、左手を鞘に添えて構えようとしたのだ。葵咲は土方の左手に引かれて刀が抜けなかった。勿論、土方も悪気があってしたわけではない。反射的に身体が動いてしまったにすぎない。だがそれに対して葵咲は土方に苦言した。
葵咲「刀握るのは右手でしょ?左はこっちに貸して下さいよ!私が刀握れなくなっちゃうじゃん!」
土方「うるせーな!構えなんてのは、つい癖で動いちまうもんだろーが!!」
ギャーギャー目の前で騒ぎ、グダグダな二人。その様子に男が痺れを切らしてツッコんだ。
「ホント何なんだよ、テメーら!!」
そんなひったくり犯のツッコミも無視して、なおも騒ぎ立てる二人に、とうとう男はキレた。
「しゃらくせェェェェェ!!」
ひったくり犯の男は懐から拳銃を取り出し、二人に向けて発砲する。葵咲と土方はそれぞれ逆方向へと避けようとした。土方は右側へ、葵咲は左側へだ。
これまた当然の事ながら二人の間にある手錠が、その行動の邪魔をする。
土方「のわっ!!あっぶね…っ!!」
葵咲「ちょ、土方さん!危ないじゃないですか!」
土方「そりゃこっちの台詞だろーが!!てめっ!何やってんだよ!!」
綺麗に避けることが出来ず、銃弾は土方の頬を掠めたのだった。土方が怒るのは無理の無い話だが、それは葵咲も同じ事。今回はたまたま土方の頬を掠めたが、下手をすれば葵咲の肌を掠めていた可能性だってあるわけだ。葵咲が異論を唱えたくなる気持ちも分からなくはない。
葵咲「私はこっちに避けようとしたんです!」
土方「そっち行ったら俺に直撃すんだろーが!いい加減にしろよ!」
二人がそれぞれの持論を抱えて討論していると、お約束。ひったくり犯の男がここでもツッコミを入れた。
「それ俺の台詞ゥゥゥ!テメーらがいい加減にしろォォォ!!」