第51章 心頭滅却すれば刀にもなれる。
叫び声を聞き、その方向へと目を向ける葵咲。
葵咲「!? 土方さん!行きましょう!!」
放った言葉は女性のもとへ駆けつける選択肢だった。瞬時にその言葉を理解出来ない土方。それもそのはず。今は張り込み中だ。その局面でそんな台詞を吐かれるとは思ってもみなかったからだ。思わず葵咲の方を二度見して応える。
土方「・・・・は?」
葵咲「ひったくり犯捕まえないと!!」
土方「ちょ!今 張り込み中ゥゥゥゥ!!!ひったくり犯なんて町奉行にやらせりゃいいだろ!俺たち真選組は対テロ組織だぞ!!」
お忘れの方もいるかもしれないが、真選組は対テロ組織だ。優先される事項は薬物売買を行なっている攘夷志士逮捕である。ひったくり犯等、相手にしている暇はない。だが葵咲は土方の腕を引き…というより、自らの腕をぐいっと引いて土方を誘導する。
葵咲「どうせ動きないんですから!これも警察の仕事です!」
そしてそのまま葵咲は土方を無視して走り出した。土方は無理やり腕を引かれて体制を崩し、葵咲に引きずられた。
土方「ちょ!のわァァァァ!!」
葵咲達は逃げ行くひったくり犯の行く先を予測して先回り。そして何とか追いついて男の前に立ちはだかった。
葵咲「待ちなさァァァァい!!」
「なんだテメーら!!」
葵咲「神妙にお縄につきなさいィィィィっ!!」
「くそっ!」
真選組の制服を見て、ひったくり犯の男は舌打ちを零す。だがまだ諦めきれないといった様子で葵咲達を睨み、逃げる隙を窺っていた。
その事は葵咲にも伝わっていた。葵咲は男を逃すまいと構え、土方へと声を掛けた。
葵咲「さぁ、いきますよ、土方さん!」
土方「チィッ!仕方ねぇ!!」
ここまで来てしまっては引き返すわけにもいくまい。仕方なく土方も構える事にした。
だが・・・・。