第51章 心頭滅却すれば刀にもなれる。
紆余曲折あったものの、なんとか張り込み先へと訪れた土方と葵咲。訪れた場所は人気のない路地裏。土方の話によれば、この日・この場所にて違法薬物の売買が行なわれる予定だとか。その売買を行なっているのが攘夷志士であるという情報が入った為、芋づる式に他の志士達もお縄にしようという手筈である。本日の張り込み目的は違法薬物売買が行なわれている現場を押さえ、現行犯逮捕することだ。
本来なら静かに現場で張り込まなければいけない局面なのだが、二人は物陰へと隠れながら先程の厠での出来事について討論していた。
土方「ちゃんと耳栓してたからな!何も見てねぇからな!」
葵咲「ホントですか~?」
じと~っとした目付きで土方を睨む葵咲。本当にしっかりと耳栓をして音を聞かないようにしていたのかと、怪しむように葵咲は土方を睨んでいた。だがここで土方が折れるわけにはいかない。面倒だからと折れてしまったら、またもや“変態”のレッテルを貼られてしまいそうだ。葵咲の疑いの言葉に対して土方は大声で反論する。
土方「嘘なんかついてねーよ!!」
そんな土方の様子を見て、折れたのは葵咲の方。葵咲はため息を漏らしながら観念した。
葵咲「もういいです。それより…、誰も来る気配がありませんね。」
二人は身を潜めながら取引が行なわれると言われている場所へと目を向ける。人間どころか、野良猫一匹通る気配が無い。土方は唸りながら現場の方を睨んだ。
土方「そうだな。…もう少し様子見てみるか。」
情報はガセだったのだろうか。日を改めるべきかとも思ったが、まだこの場に訪れて一時間も経っていない。もう暫く様子を見てみようと思ったその時、女性の悲鳴が二人のもとへと届いた。
「キャァァァァ!ひったくりよォォォォォ!!」