第50章 音姫使ったって外に音は聞こえている。
なんとか無事に用を足し、厠から出る二人。葵咲はムッとふくれっ面をしていた。
葵咲「・・・・・。(ムスッ)」
土方「…悪かったって。わざとじゃねーよ。」
葵咲「分かってますよ。」
本当に納得しているのかは疑問だが、これ以上弁解するのも逆に不自然だ。土方は大きなため息を漏らす事しか出来なかった。
土方「…ハァ。」
二人の間の空気は少しギクシャクしている。正直気まずい雰囲気だが、離れられない。仕方なく葵咲を連れて張り込み先へと向かおうとするが、今度は葵咲が足を止めた。
葵咲「・・・・・。」
土方「? どうした?」
葵咲「あの…私も・・・・ちょっと…したくなりました。」
土方「!!!???」
今度は土方が顔を真っ赤にした。
先程と同じ要領で、今度は葵咲が個室に入った。
葵咲「絶対こっち見ちゃダメだからね!?」
土方「わっ、わーってるよ!!」
少し頬を染めながら、個室のドアから顔を背けて言う土方。そんな土方の返答を聞き、葵咲は慌てたような表情を浮かべる。先程と違っている事が一点あった。それは土方が葵咲に耳栓を渡されたこと。
葵咲「あっ!しっかり耳栓してよ!!男子便所(ココ)には音姫ないんだから!!」
土方「別にいいじゃねーか、音ぐらい…」
葵咲「いいわけないでしょ!!絶対聞かないでよ!?」
土方「分かったって!!」
乙女心は複雑だ。男には理解出来ない羞恥心というものがある。内心くだらないと思ってしまう土方だったが、それを言ってしまえばまた葵咲を怒らせてしまうだけだ。
二人の手錠生活はまだ始まったばかりなのにも関わらず、前途多難の兆し。土方はまたもや深いため息をついた。
土方「・・・・ハァ。」