第5章 就活するなら資格は沢山持ってた方が有利。
そんな土方のツッコミは無視し、葵咲は刀を大事そうに両手で抱きしめる。
土方「奴の仲間が持ってた。返しとくぜ。」
葵咲「有難うございます!!」
まるで誘拐された我が子が帰ってきたように喜び、葵咲は頭を下げた。土方は少し照れくさそうに頬を掻き、今度は葵咲の傍らにいる銀時に話しかけた。
土方「おい、こいつの奉公先ってのは決まったのか?」
銀時「あぁ?まだ決まってねぇよ。どうかしたのか?」
銀時の問いかけに土方は、少し答えにくそうに、言い訳でもするかのように小さな声で話し始めた。
土方「…そういやァうちの勘定方が一人辞めちまってたんだ。税理士の資格持ってる奴、近藤さんが探してたなーってふと思い出してな。」
銀時「!」
総悟「土方さん、それって…。」
つまり何が言いたいのか、はっきりとした言葉を聞きたいと言わんばかりに総悟が詰め寄る。
土方「な、なんだよ。別に俺が必要としてるわけじゃねぇからな!あくまで真選組の勘定方としてだ!!…それにまぁ、こう度々攘夷浪士どもに利用されちゃあ、こっちとしても迷惑なんだよ。敵が増えるのは御免だ。」
総悟「それじゃあ…!」
土方「さっき勢いで正社員の内定出しちまったんだ。後は受諾するかどうか、本人次第だろ。」
そう言って土方は煙草に火を点け、高橋を乗せたパトカーの方へと向かう。
葵咲「え?」
思いもよらない内定通知に、葵咲はきょとんとしていた。
銀時「行くかどうかは、お前が決めろ。」
本人に決断を迫る銀時だったが、それは何処か後押しするようにも見えた。
葵咲「あの、雇って頂いて…いいんですか?」
念の為に再確認で、土方の背中と総悟に問いかける。その問い掛けに何の躊躇いもなく、総悟は葵咲の手を取って笑顔で答えた。
総悟「もちろん!大歓迎でさァ!」
葵咲「有難うございます。」