第50章 音姫使ったって外に音は聞こえている。
こればかりは仕方がない。恥ずかしいからといって行かない事も出来なければ、我慢出来るものでもない。
葵咲もそれなりに歳を重ねたいい大人だ。特に騒ぐこともなく、厠へと訪れた。
葵咲「まぁ生理現象ですから仕方ないですよ。さっ、どうぞ。」
そう促されたものの、土方は厠の前で足を止めて入ることを躊躇う。というより入れない。土方は葵咲を怒鳴りつけた。
土方「ここ女子便所じゃねーか!入れるかァァァァ!!」
葵咲「私、女子ですもん。」
土方「いや、そりゃ分かってるよ!けど俺が入ったらマズイだろーが!」
最もなご意見である。土方が怒るのも無理はない。そして何処かで聞いた事のあるフレーズを口に出して男子便所の方へ行くよう促す。
土方「女子はあれだろ!『今日だけ男の子♡』が使えんだろ!」
葵咲「大阪のオバチャンじゃん!私まだそんな歳じゃないし!」
土方「羞恥心だけですむ話だろ!俺は犯罪になるんだよ!!」
二人は仕方なく男子便所の方へと足を向ける。まぁ当然といえば当然の事なのだが。
葵咲「もう。しょうがないなー。」
土方「あたりめぇだろ!!」
そして土方はついいつものクセで小便用の便器の方へと足を向ける。完全に無意識である。が、ここで葵咲が立ち止まり、土方の足を止めた。
葵咲「ん?…ちょ、ちょっと待って!!」
土方「あん?」
葵咲「た、立ってするって事は…っ!!」
土方「あ…っ!」
そこまで言われて初めて気付く土方。そう。立って用を足すという事は、横でナニが放り出されるという事。いや、それより何よりナニに触れる好意が発生するという事…!!
二人の手は今手錠で繋がれている。下手をすれば葵咲の手に触れてしまう可能性だってあるわけだ。
葵咲「~~~~~っ!! 」
土方「わっ!違っ!ついいつもの癖で…!」
葵咲「バカァァァァ!!!!!変態っ!!!!!」
土方「!!!!!(ガーン)」
顔を真っ赤にして本気で怒り、嫌がる葵咲に対して、土方は結構ショックを受ける。そんなに嫌なのか…。それが土方の正直な心の声だった。
結局土方は個室へと入り、座って用を足す事に。ドアは葵咲の腕一本だけ入るぐらいの隙間を開けた状態。葵咲は腕だけ中に入れて外で待機。土方は葵咲の手が自分に触れないよう最新の注意を払いながら用を足した。