第50章 音姫使ったって外に音は聞こえている。
山崎「あっ、そうそう。副長に耳寄り情報です。」
土方「あぁ?」
山崎「明日の晩まで沖田隊長、戻らない予定ですので。勝負決めるなら今夜がチャンスですよ…!!」
少し頬を赤らめながら話す山崎。その様子に土方は苛立ちながら全力でツッコんだ。
土方「何の話だァァァァ!!」
山崎「じゃあ俺、仕事に戻りますんで。…健闘を祈ってます!」
土方「だから何の健闘ォォォォォ!?」
土方の怒号もなんのその。山崎はニヤけた笑みを浮かべたまま、親指をグッと立てて立ち去っていった。
土方「あっ、ちょ、待て、おい山崎ィ!!」
葵咲「え!?ちょっと退君!?あっ!!」
土方・葵咲「・・・・・。」
ヒュウゥゥゥ…。その場に寂しい風が流れる。室内だが。
暫くその場に固まっていた二人だが、いつまでもこうしているわけにもいかない。そう思った葵咲は、土方の顔を見上げながら言葉を掛けた。
葵咲「と、とりあえず…どうします?土方さん今日のお仕事は?」
土方「…俺は張り込みの予定入れてる。そういうお前はどうなんだよ?」
葵咲「会計処理の予定ですが、明日でも大丈夫です。」
土方「そうか。」
葵咲「なので、張り込みの仕事に行きましょうか。」
一心同体の状態とあれば、お互いの意見を尊重する必要があり、仕事柄どちらかの仕事を選択しなければならない場合もあるだろう。
葵咲は土方の本日の仕事内容を確認して、張り込みの仕事は今日でなければならないと判断。そちらを優先する事にした。そして勿論、土方もその意見を承諾したのだった。
張り込み先の場所を聞き、そちらへと足を向けようとする葵咲。だが土方はその場で足を止め、何か考え込むように俯いた。
土方「・・・・・。」
葵咲「? 土方さん?」
様子のおかしな土方に、心配そうな顔を向けて声を掛ける葵咲。土方は顔を上げ、とても言い辛そうに言葉を押し出した。
土方「…あー。悪ィ。厠、行きたくなっちまった…。」
葵咲「え。」
土方「・・・・・。」
とても申し訳なさそうに、そして少し恥ずかしげに頬をポリポリとかきながら再び視線を逸らす土方だった。